目次

    コスト最適化の全体フレームワーク

    まず押さえておきたいのは、AWS 側が提示するコスト最適化の枠組み — AWS Cloud Financial Management (CFM) — です。CFM は大きく以下のサイクルで回すことを想定しています。

    1.可視化 (Cost Visibility)
    2.最適化 (Cost Optimization)
    3.計画・予測 (Planning & Forecasting)

    このサイクルを組織やチームの標準プロセスとして回すことで、短期的なコスト削減だけでなく、中長期での持続可能なコスト管理体制を作ることができます。

    可視化:まず「どこにお金を使っているか」を把握する


    最適化の第一歩は「現状のコスト構造の可視化」。ここでの作業を疎かにすると、どこを削ればいいかの判断がブレやすいです。

    主な手段

    ・AWS Cost Explorer を使ってサービス別/アカウント別/リージョン別/タグ別にコストを分析可能。どのサービスがコストのボトルネックか一目で見える。 
    ・タグ管理・アカウント分割などで、環境 (本番/ステージング/開発) やプロジェクト単位でコストを切り分けが可能。これにより「何がムダか/本当に必要か」の判断が明確に。 
    ・必要に応じて、コストと利用状況のデータをエクスポート → BI ツール (例:Amazon QuickSight など) でダッシュボード化。可視性と共有性が上がる。 
    ・可視化は “見えないムダ” を洗い出す土台 ― このステップなしに最適化は始まらない。


    最適化:無駄を削り、適切な構成・購入方法を見直す

    可視化でコスト構造が見えてきたら、次は実際に手を入れるフェーズ。AWS ではさまざまなサービス・仕組みを使って“最適化の道”が用意されています。 

    主な手法とポイント

    ● コンピューティングリソース(例:Amazon EC2)の最適化
    ・インスタンスタイプの見直し:過剰スペックな EC2 はコストのムダ。例えば CPU 使用率が低ければ、コスト効率の良い小さめインスタンスへ変更。AWS のレコメンデーション機能 (Cost Explorer の「サイズの適正化に関する推奨事項」) を使うと判断が容易。 
    ・インスタンス世代の更新:古い世代のインスタンスを使い続けるのではなく、より性能対コスト比の高い新世代へ乗り換えることでコスト効率改善。 
    ・オートスケーリング/スケールイン/スケールアウト:負荷に応じて台数を動的に調整。固定台数で常時稼働させるのではなく、必要なときだけリソースを確保する運用。  

    ● 割引オプションの活用
    長期運用が見込める場合は、オンデマンドではなく <予約 (RI)/Savings Plans の活用。コストを抑えられる可能性あり。
    ・短期/一時的な処理やテスト用途にはスポットインスタンスを検討。通常料金より安価で使えるケースがある。 

    ● ストレージ/データサービスの見直し
    ・利用頻度の低いストレージ (例:古いログやアーカイブデータ) は、S3 のストレージクラス変更やライフサイクル設定でコストを下げる。
    ・RDS や EBS、S3 などのストレージ容量/バックアップ設定を定期的に見直すことで、不要なストレージ課金や過剰スペックを防ぐ。  

    ● 継続的/組織的な取り組みとしての “最適化文化” の醸成
    ・単発のチューニングではなく、定期的なレビュー・改善。CFM に沿ったサイクル (可視化 → 最適化 → 計画) を組織に根付かせること。 
    ・管理/運用を担当するチーム (例:CCoE やインフラ部門) が主導し、各開発チームに対するガイドラインやベストプラクティスを制定することで、プロジェクトごとのばらつきを防ぐ。 

    また、実際に AWS の Cost Optimization Hub を使って “どこが最適化可能か” を検証した事例もあります。サーバーワークスの社内検証レポートでは、Hub が出す「推奨事項」を整理・優先順位付けして対応することで、効率的なコスト削減サイクルを回せると報告されています。 


    運用/管理フェーズ:継続的なコスト管理とガバナンス

    最適化した後も、放っておくといつの間にかコストは再び上がってしまう可能性があります。そのため、継続的/組織的な運用体制が不可欠です。
    ・タグ設計やアカウント分割により、環境・プロジェクト単位でコストを明確に分ける。これにより、チームごとのコスト責任が明らかになる。 
    ・定期的 (例:月次) のコストレビュー。Cost Explorer や Cost Optimization Hub の推奨を見直し、無駄が出ていないかチェックする。
    ・ガバナンスルールの整備 — 例えば「本番環境は RI/Savings Plans を原則使用」「検証環境はスポット or 最小スペック」など、ポリシーで統一。これにより、チームごとの統一基準を維持。 
    ・定期的な教育・共有。「クラウドは使いやすいが、意識しなければコストが膨らむ」という事実を、組織の“知見”として落とし込むこと。


    なぜ “可視化+最適化+運用” の組み合わせが重要か
    ・“可視化なし” → どこに無駄があるか分からず、最適化の対象を誤る恐れ
    ・“最適化だけ” → 一時的にコストは下がっても、運用がルーズならすぐリバウンド
    ・“運用だけ” → ポリシーやルールがあっても、現状把握が不十分だと機能せず

    この 3 要素 — 現状把握/改善/継続運用 をセットで回すことで、初めて「“無駄が少ない”かつ“安定した”コスト管理」が実現できます。
    CFM というフレームワークは、まさにこの考え方を体系化したものです。


    結論:AWSコスト最適化は“継続的プロセス”

    AWSを導入して「初期設計をやって終わり」、ではコスト最適化とは言えません。

    本当に費用対効果を高めるには、
    ・現状を可視化し
    ・適切に設計/構成を絞り込み/割引を使い
    ・その状態を維持する運用体制を作る

    ――この一連のサイクルを“プロセス”として組織に根付かせることが不可欠です。

    特に PM・ディレクターの立ち位置では、プロジェクト設計時だけでなく「運用ガバナンス」「コスト管理フローの整備」に主導的に関わることで、クラウドのメリットを最大化できるはずです。

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