目次
1. MVC(Model-View-Controller)
MVCは、古典的かつ広く使われてきたパターンです。3つの要素にアプリケーションの責務を分割します。
- Model:アプリケーションのビジネスロジックやデータを扱います。データベースやAPIとのやり取りがここに含まれます。
- View:画面の表示、つまりユーザーインターフェースの部分を担います。
- Controller:ユーザーからの入力を受け取り、ModelやViewを操作する役割を持ちます。
MVCではControllerとViewの結合度が高くなる傾向があり、大規模開発ではコードの複雑化につながることもあります。Webアプリ(例:Ruby on Rails)で多く見られるパターンです。
2. MVP(Model-View-Presenter)
MVPは、MVCの問題点を解消し、よりテストしやすい構造を実現したパターンです。
- Model:MVCと同様に、ビジネスロジックやデータの取得・操作を担当します。
- View:ユーザーに表示するUIを描画しますが、操作のロジックは持たず、ユーザーの操作をPresenterに通知するだけです。通常インターフェースで抽象化されます。
- Presenter:ModelとViewの仲介を担い、ロジックを実装し、必要に応じてViewを更新するよう指示します。
PresenterはViewのインターフェースを通じて操作するため、ユニットテストでモックに置き換えることが容易です。AndroidアプリのJava時代には、よく使われていました。
3. MVVM(Model-View-ViewModel)
MVVMは、データバインディングが使えるプラットフォームで特に強力なパターンです。Android(Kotlin)、iOS(SwiftUI)、WPFなどでよく採用されます。
- Model:他と同様に、ビジネスロジックとデータ操作を担当します。
- View:UI描画に特化し、ユーザーとやり取りします。ViewModelとバインディングされており、状態が変わると自動的にUIに反映されます。
- ViewModel:Viewの状態を保持し、ユーザー操作に応じたロジックを実装します。ViewModel自身はViewを直接参照しません。
ViewとViewModelの連携には、LiveDataやStateFlow、Observableなどの仕組みが活用され、双方向データバインディングも可能です。
4. それぞれの使い分け
どのパターンを採用すべきかは、プロジェクトの規模や使う技術スタックによって異なります。
- MVC:比較的シンプルな構成が求められるWebアプリなどに向いていますが、大規模なUIには向きません。
- MVP:テスト性が非常に高く、UIの責務を軽くしたい場面に適しています。
- MVVM:データバインディングが活用できるモダンな環境で特に威力を発揮します。
5. まとめ
それぞれのパターンの特徴を一言でまとめると以下のようになります。
- MVC:構造は単純だが、ViewとControllerの分離が曖昧になりやすい。
- MVP:責務の明確化とテスト性の高さが魅力。
- MVVM:UIとロジックを最もきれいに分離できるが、バインディングの理解が必要。
6. 最近のトレンド
最近の開発では、以下のような動向が見られます。
- Android:MVVMとJetpack Compose、Kotlin FlowやLiveDataを組み合わせるのが主流。
- iOS:SwiftUIの導入により、MVVMが標準化されつつあります。
- 複雑なアプリ:MVVMとクリーンアーキテクチャを組み合わせた構成も一般的です。
このように、MVC・MVP・MVVMはいずれも「責務を明確に分離し、よりよいUI設計を実現する」ための考え方です。どれを採用するかは、チームの経験や技術的な制約に応じて選択しましょう。