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    アーカイブコレクションという名の在庫セール

    こんにちは。フランス班のオリヴィエです。

    フランスでは、夏のセールの真っただ中。町の至るところにSoldes(ソルド)の文字が並び、財布に厳しいフランス人はここぞ“!とばかりにお目当ての品物を買い求めます。

    日本でもところどころでセールが始まっていますが、日本とフランスの大きく異なる点は、フランスでは、法律によってセール期間が一律に定められていること。セール期間以外に店がSoldesの文字を掲げることは禁じられています

    フランス全土で(一部例外地域あり)、百貨店のような大型店から小さなブティックにいたるまで一斉にセールを開始します。抜け駆けは許されません。規制を守らない場合には、罰金が課される厳しさです。これは、大型店も小さな店も平等に商品を販売できるようにとの配慮によるものですが、まさに自由・平等・博愛の精神の表れと言えます。

    フランスでは、セール用に商品をストックしておくことはNG。最低でもセール開始の1ヶ月前から店頭に並んだ商品が値引きされていきます。最新コレクションがセール品として並ぶことはあっても、売れ残った商品が並ぶことはないわけです。売り切れてしまったら、それまで。仕入れ先にストックがあったとしても、原則再入荷はありません。

    しかしながら、長い間、在庫を持たないようセールに頼ってきたフランスのファッション業界も、ファストファッションによる商品の回転の速さと低価格化で、法律に縛られたセール期間だけでは年々蓄積する在庫を処分することができなくなってきました。

    そこで今注目されているのが、アーカイブというコンセプトです。アーカイブというと、図書館にある古い蔵書や資料をイメージしますが、この場合のアーカイブは、その商品が作られた年の流行りを代表するような商品を指しています。「古いコレクション」を破格の料金で売るわけです。

    このアーカイブの販売は、既製服からラグジュアリーにいたるまで広まり初めています。特にデザイナーズブランドは、ブランドのファン向けに商品を絞り込み、短期間で、セールの時期とは別の時期にイベント形式で行い、特別感を演出して販売しています。セール時期も、ニュースレターで突然案内されるなど、一般向けのセールと差別化され、ファンの定着を促します。

    もう一つ挙げられるのが、セールに使われる用語のポジティブ化です。これまでは、在庫をさばくための割引には、「値下げ」(démarques)「在庫一掃」(déstockage)など、どちらかというと価値の低い印象を与える言葉ばかりが使われてきましたが、この在庫に光を当て、「値下げ」の代わりに「やさしい価格」(prix tout doux)、「お買い得」(bonnes affaires)は「宝探し」(chasse au trésor)に、「売れ残り」は「アイコニック(象徴的)な商品」(pièces iconiques)に言い換えるなど、ポジティブで「特別感」を出す表現を使うことが、新たなマーケティングの手法として注目されています。

    近年、環境にダメージを与えるゴミとして衣料品が挙げられ、ファッション業界の取り組みが注視される中、在庫を減らすためにセール一辺倒からの新たな手法がフランスで模索されています。

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