目次

    皆さまがご存知の通り、美術館には数々の有名な画家が油絵の具でキャンバスに風景を描いた美しい油絵や、
    職人気質の彫刻家が繊細に彫り上げた神々の彫刻等が芸術品として展示されています。

    その芸術品の多くは運命の人と出会った時に感じる「特別な存在感」を醸し出しており、人の感性を刺激し感動させ、視覚情報を独占させてしまう不思議な力があるのです。

    しかし、”美術品だけ”で人の感性を刺激させ、視覚情報を独占できる事は本当に可能なのでしょうか。
    郊外に出てみると、公園の池の中心などにある”彫刻の噴水”や、高架橋の下にスプレーで悪戯された”ストリートアート”等の芸術作品が世の中には無数に満ち溢れています。

    人によってはこれらの作品も立派な”芸術品”となりますが、美術館に展示されている芸術品ほど、
    多くの人の関心は惹かれることはなく、そこに存在するだけの”モノ”と化している事が感じ取れます。
    この事から、作品の完成度だけで人を引き付ける事はほぼ出来ないこと、いかに美術館が展示品の芸術性をより多くの人に伝えるために様々な手法を取っていること、そして人間の美意識を完全にコントロールし、作品の価値を高めている事が解ります。

    では、美術館ではどのような手法で展示品の芸術性を高めているのか、どのようにして作品の価値を高めているように見せているのかを、いくつかの事例を元に紹介させていただきます。

    美術性を高める展示方法

    いくら作品が繊細に書き込まれていたのしても、暗い場所や人通りの多い場所に設置しても誰も見向きもされません。美術館では展示品を美しく人に見せるために、照明機器や目線の距離などを駆使し、時に心理的に惑わす手法を取る場合もあります。

    例えば、同じ作者でも絵画には大小様々なサイズの物が存在し、WEBやチラシの画像のようにレイアウトを調整しようとしても、何しろ「アナログ」な手法で描かれているので調整が聞きません。
    その様な場合には、小さい絵画の裏にLEDライトなどを設置し光らせたり、サイズと色使いが全くもって違う絵を横に並べることにより、 大きな作品と小さな作品の存在感を平等になっているように錯覚させ、むしろ違和感の無い様に美しく見せることも可能なのです。

    また、描く人の目線に合わせ、高さを考えて設置することも重要です。
    作品を描くほとんどの作者は常に作品を見てくれるお客様の事を考えて作品を作ります。
    目線を合わせて設置することにより、多くの人が快適な気持ちで見ることができるのです。

    美術館が行うグローバル対応とは

    芸術に国境は無いと言われます。美術館などでは、自国の来場者だけでは無く、海外の旅行者でも楽しんで貰うべく色々な グローバル対応サービスなどを実施しております。

    引用:館ナビ

    2015年9/19~12/13に東京都美術館で開催されたマルモッタン・モネ美術館所蔵:モネ展は来場者数が763,512人、
    一日当たりの平均来場者数はのべ10,180人という凄まじい記録を達成しました。
    この事情に対処するために、博物館・美術館向けiBeaconアプリ【館ナビ】を導入し、自国の音声でガイドをしてくれるサービスを提供しました。

    美術館は人が好む色のポジションや、次の作品に自然に視線が移る導線を引くのも実施しています。
    例えば、貴族や王族の肖像画だけを展示しているゾーンはあえて見栄が立つように明るく、風景画や静物を展示してあるゾーンはほんの少しだけ暗くします。
    これをボーダー色の用に繰り返していけば、自然と明るさの違うゾーンに向かって移動してしまうのです。
    言葉や考え方を気にせず、”人間が本来持っている本能”を心理的に応用させれば、居心地のよい空間が自然に形成されていくのです。

    美術館の創り出す世界観とは

    引用:ルーブル美術館

    パリにあるフランスの世界最大級の美術館(博物館)であるとともに世界最大級の史跡のひとつで、パリ中心部1区のセーヌ川の右岸に位置するルーヴル美術館は、奇抜ではないものの、外観のルーヴル・ピラミッドの建設は大きな波紋を呼びました。
    また、その一方で、中世と未来の建造物がみごとに融合されている賞賛する者もいることから、人が良いと感じる事もあるし、悪いと感じることもある、まさに個人個人の考えが芸術点を決めるデザインになりました。

    引用:オルセー美術館

    1970年代からフランス政府によって保存活用策が検討されはじめ、イタリアの女性建築家ガエ・アウレンティの改修により19世紀美術を展示する美術館として生まれ変わることとなった経歴があります。
    同じパリにあるルーブル美術館とは違い、歴史ある場所に歴史ある作品を展示することにより、まるでその時代に行ったような気分に錯覚させ、当時と同じ空気を楽しむことができるのです。

    美術館は一見すると、昔ながらのアナログ手法のみで構築された過去の遺物としか見れませんが、中身を開いてみると、数千年にわたって蓄積された人を魅了するための技術と、最先端の展示技術が最高に混じり合った、全く新しい独自の世界観を作り上げることに成功してたことに気づかされます。

    もし、アイデアが閃かなかったり、新しい何かを追い求めているときは、過去と今を学ぶべく美術館によってみるのも良いかもしれません。

    PREV
    2017.05.16
    チュニジアでAIを搭載したドローンの緊急シミュレーション実験
    NEXT
    2017.07.03
    私たちの身近にあるノンバーバルデザイン~前編~