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    ドハティの閾値とは

    ドハティの閾値とは「システムの応答が0.4秒以内のとき、コンピューターとユーザーの双方が最も生産的になる」という提唱です。
    1982年にウォルター・J・ドハティとアラビンド・J・タダーニによって提唱され、IBMシステムズジャーナルにて発表されました。

    1970年代の初めまで、人間が次の行動を行うまでに2秒(2000ミリ秒)かかると考えられていたため、システムの応答時間も2秒以内であれば優れたパフォーマンスであると判断されていました。
    しかし、1979年頃からシステム性能が向上したため、応答時間が2秒未満に縮まりました。
    この頃からドハティ氏はユーザーの生産性が向上していることに気づき、上記の提唱をしたそうです。


    ドハティの閾値のポイントは5つです。
    ・0.4秒以内にフィードバックを行うことで、ユーザーの注意を引きつけ、生産性を高めよう
    ・体感性能を改善し、感じられる待ち時間を減らそう
    ・ アニメーションを入れることで、バックグラウンドで読み込みや処理が行われている間も、ユーザーを繋ぎ止められる
    ・プログレスバーは、正確であってもなくても待ち時間への苛立ちを和らげる
    ・ほとんど処理時間がかかっていない時でも、意図的に遅延させることで体感性能が改善して信頼感の醸成につながる

    システムのパフォーマンス(応答時間)は優れたユーザー体験を届ける上で欠かせません。
    最初の画面表示にかかる時間をいかに減らすか、ユーザーの入力への反応とそれに対するフィードバックをいかに速くするか後続ページをいかに速く読み込むか。
    人は0.1秒程度の応答時間であればほとんど気づきません。
    遅延が1秒を超えるとユーザーはタスク(Webサイトで達成したい目的)以外のことを考え始め、サービスの離脱につながってしまいます。

    下記にドハティの閾値を考慮した具体例を2つご紹介いたします。

    楽観的UI

    楽観的UIとは、処理が進んでいる最中にアクションが成功したというフィードバックを返すUIのことです。
    ネイティブアプリやSPA(Single Page Application)などで使われる技術で、非同期の通信処理が成功するという前提(楽観)のもとに、
    通信のレスポンスを待たずに次の処理を行うというものです。

    例えば、Instagramの場合フィード投稿のハートのボタンをタップするといいね!の更新が発生します。
    画面中央にハートのマークが出現し、即座にユーザーにレスポンスを返しています。
    この間に裏では非同期通信が行われ、サーバーのデータを更新しています。

    アニメーション

    UIを改善するアニメーションの最たる例がプログレスバーです。
    プログレスバーとは、パーセンテージ表示で進捗を表すインジケーターです。

     下記の理由から、進捗表示の正確さに関係なく単純にプログレスバーを表示させるだけでも、ユーザー体験は向上します。
    ・ 処理が進んでいる安心感
    ・興味を維持させる
    ・ 動きを意識すると、体感の待ち時間を忘れる

    しかし注意点として、いかにリッチなアニメーションでもユーザーの離脱を防ぐのは10秒が限界です。
    10秒以上かかる場合はシステムの実装方法を工夫し、処理速度を上げるべきでしょう。

    まとめ

    いかがだったでしょうか?
    Webが民主的になった2.0の時代と比較して、左近のユーザーの待ち時間は短くなっています。
    ショート動画の台頭もあり、1つのコンテンツ消費にかける時間がとてもシビアになってきています。
    ドハティの閾値は、現代のWebサービスを設計する上でとても重要な考え方です。

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