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    筆者のプロフィール

    現在30代前半。出身は東北の三陸地方で、両親が自営業の共働き。三人兄弟の長男。
    高校2年生の時に「東日本大震災」で被災。それまで進学を考えていたが、弟達のことを考え、就職を決意。
    両親が不安定な自営業だったこともあり、公務員を目指す。結果、晴れて19歳から28歳まで東京特別区の某区役所で正規の行政職として働く。

    区役所でのキャリアについて

    入庁から8年強勤務。その中で以下の様な3部署を経験しました。
    1. (1)1から4年目 保育部門
    2. (2)5から7年目 福祉事務所(障害者支援の担当)
    3. (3)8年目    都市計画部門

    地方の行政職という仕事について

    簡単に言うと、「万屋(なんでもや)」です。民間企業の「総合職」よりも様々な部門が存在します。
    選挙、教育、土木、福祉、医療、法律と数えだすときりがないほどの種類があり、異動のたびに転職級の業務の変更があります。
    また、配属に際しては、基本的にその人の適不適や希望は一切関係なく、人事の胸ひとつで決定します。関係機関等との癒着を避けるため、3から4年程度で異動するのが適切とされています。
    ですので、「この仕事だけやりたい」と思っている方は、専門職(土木や保育等)がない職場であれば、なることは早々に諦めた方がいいです。基本的にやりたいことはできません。
    東京都庁の背後に青空が広がる写真

    公務員になるうえでのデメリット

    1. (1)給料がじり貧
    2. 世間では、公務員は高給と思われているかと思いますが、それは国家公務員のうちのエリートたちの話で、一般的な国家・地方公務員は基本的にじり貧です。私は、進学できなかったので、「高卒程度」という扱いでしたので給料が低いのは言うまでもありませんが、同期の大卒の人でも額面は23万程度で、手取りは20万強というところです。このため、多くが職員寮(民間の賃貸の借り上げでごく普通のアパート)に入居し少しでも賃料を抑えるように努めます。奨学金を借りている人は返済に苦労することと思います。昇給もゆっくりとしたもので、階級表から基本的に一つずつ上がっていくシステムであるため、大きい仕事をしたことを評価され上がる可能性のある民間企業と考え方が異なります。
    3. (2)やりたいことが出来なかったり、長期のプロジェクトだったりでモチベーションの維持に苦労する
    4. 既に述べた通り、やりたいことがある人には公務員は向いていません。関係している外郭団体や民間団体に就職を検討した方が運や時間の観点でも有利です。やりたいことがない人には向いているかといえば、それも別で「やりたくない仕事」を避けることも困難です。民間企業であれば、その会社の専門分野があるかと思いますので、付随するものに限られるケースが多いと思いますが、地方の行政職の場合ありとあらゆる分野を担います。また、やりたい部門だったとしても、足掛け何十年のプロジェクトであればその行程のどの位置で仕事をしているのか、どのくらい進んだかという部分の成果が見え辛くこの点でもモチベーション維持を困難にします。
    5. (3)感謝されることはほとんどない
    6. 多くの場合「市民(住民)」を相手にするので、業務に関して感謝や労いは基本的にないです。配慮くださる市民の方は感謝の言葉をくださることがありますが、それは他の誰にでもいう言葉で「あなただから言う」という仕事を評価したものでないことがほとんどです。人によっては「税金泥棒」や「税金で飯食っているんだから早くやって当然」などという罵詈雑言を浴びることもあります。
    7. (4)学歴マウントがある
    8. これは、私が働いた場所が都市部であったということも大きいかもしれませんが、同僚に「東大」「MARCH」「早慶」等の難関大学出身者がいます。このためなのか、出身大学を聞きあったり、聞いてもいないのに出身大学を話してくるようなシーンがありました。私が特に気に入らなかった点は高卒程度で給料も低い状況だったのに、これらの名門大の人たちと同じパフォーマンスを求められる点です。「同一労働同一賃金」という言葉は正規非正規だけでなく学歴に対しても適用してほしいものです。
    9. (5)公務員として働いたことは他で活かせることが少ない
    10. 民間で働いた経験は他の会社でも比較的活かすことが可能かと思います。他方で公務員として働いたことはまず、どんなことをしていたのか説明する前になぜそのような仕事が必要なのか制度の説明からしなければいけないことがほとんどです。簡単に言うと、つぶしが効かないことがほとんどです。
    11. (6)副業ができない
    12. 公務員は「職務専念義務」というものがあり、給与が少ないのに基本的に副業は禁止です。
    13. (7)リモートワークがほとんどできない
    14. 公務員は個人情報保護や文書主義などの理由からリモートワークがとても難しい職種の一つです。また、役所自体が旧態依然としているため、コロナ禍でさえリモートワークがほとんどできない状況でした。自治体によるとは思いますが、この傾向はこの先も続くものと思います。
    15. (8)同僚からの評価は加点方式ではなく減点方式
    16. 公務員の仕事は、基本的にチームで進めていくものが多いため、同僚からの評価は非常に重要です。この評価の上げ方は如何に指示に忠実にミスなく仕事を進めていくことです。ミスのたびに落ちこぼれとの評価を受け、そのミスを減らす提案や業務の効率化などの提案をしても評価は変わりません。
    17. (9)労働基準法の対象外であるため、残業やハラスメントの是正勧告を労基ができない
    18. 公務員は遵法することが当たり前という解釈や別法が根拠であるため、一般に第三者機関として存在する労働基準監督署(労基)の監査の対象外となっています。このことから、残業を制限する36協定はなく、ハラスメントがあった場合の是正勧告などもありません。基本的に自治体の良識にゆだねられていますが、改善することは容易ではないでしょう。そもそも働き方改革の旗本の「厚生労働省」が最もブラックな働き方をしています。
      激務に頭を抱える男性の写真

    おわりに

    公務員になってから辞めるとなると「せっかく試験に受かったのに」や「なりたいと思ってもなれない人もいる職業だから」や「安定しているからやめないほうがいい」など周りから言われることや、自身で躊躇してしまうこともあります。
    しかし、こうした辞めにくい状況こそが公務員の高い自殺率やメンタルヘルスを抱える理由となっています。また、民間企業でノウハウが活きないことも転職を立ち止まらせる要因でしょう。いずれにしろ、もしこれから公務員になりたいと考えている人は、良く考えて後悔の無い決断をされることをお祈りしています。私は転職してIT業界で働くことができてとても幸せです。
    mae tugi
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